腱鞘炎・弾発指

~手を酷使する人の腱鞘炎~

腱鞘炎は、身体全体が疲れていた時に出る場合の他に、調理師さん、美容師さん、字を沢山書く人、楽器を演奏する人などの手をよく使う人に発症する場合があります。

手を酷使する人の腱鞘炎は、腱をとりかこんで腱の動きを滑らかにしている”さや”、つまり鞘が、機械的刺激の繰り返しによって、炎症をおこした状態をいいます。

腱鞘炎自体は、この機械的刺激を減らせば良くなります。病院に行くと、「仕事を減らしなさい。」とか「休んで手を使わない様にしなさい。」とか言われることが多いと思いますが、それは自分の人生にも係っている事ですから、現実には難しいと思います。

現代医療の治療は、安静、鎮痛消炎の湿布、ステロイド、ロキソニンなどの局所注射などが有りますが、一時押さえのことが多い様です。

最終的には手術があります。手術は、日常生活には支障がなくても、プロとして複雑な手技が必要な人にとっては致命的な障害を残すこともあるので、慎重にすべきです。

「鍼灸」は、仕事を続けながら治していくことが原則です。

腱鞘炎には、昔から有効な経穴が多数ありよく効きます。治療によって痛みが取れてきたら、「自宅でお灸」を勧めています。

それは痛みが取れたからといって、完全に治った訳ではなく、現在の職業を続けていく限り腕に負担がかかる事は避けられないのですから、自分で予防し、自分で治す方法を知って欲しいからです。

「お灸」で完璧に治すと、まるで溶接した様に強くなって、再び同じ箇所が腱鞘炎になることはありません。

~疲労による腱鞘炎~

腱鞘炎は手を酷使する人に発症する場合が多いのですが、手はそれほど使わないのに、手首や指に痛みが出る場合があります。

この腱鞘炎は、出産後に多い疾患で、例外なく背中に大きな疲労の蓄積があります。
身体の疲れ、ストレス、内臓の機能低下などが、肩甲間部に凝りを作ります。

妊娠中からの疲れが取りきれない内に、出産・育児と続いて、背中の凝りが極限状態になると、手首や指に腱鞘炎として発症します。

このタイプの腱鞘炎は、手を酷使する腱鞘炎と違って、両手首にくる事が多いです。

出産後ですから、オムツ替えや抱っこなど、赤ちゃんのお世話が沢山あります。赤ちゃんを落としては大変ですから、お母さんは痛みを堪えて育児をしなければなりません。楽しいはずの育児が辛いものになってしまいます。

この腱鞘炎は、患部のみを治療しても良くなりません。肩甲骨の内側をゆるめてやらないと治りません。早い内ならば、2~4回くらいの治療で痛みは取れます。揉んだり押したりして、こじれてしまうと、もう少しかかります。

肩甲骨の内側には「膏肓」という「経穴=つぼ」があります。この部位は心臓、肺の病はもとより、ストレス・胃腸の弱り・疲労など、様々な不調に反応して凝りを作ります。

昔から『病、膏肓に入る』(出典・春秋左氏伝  BC700年)という言い伝えがあります。「この部位に病が入ると、なかなか治りませんよ」という意味です。

肩甲間部が辛いと感じたら、疲れていると思って下さい。この凝りを溜め込まない様にすれば、様々な病気が防げます。

~弾発指(ばね指)~

ばね指の正式な医学名は「狭窄性腱鞘炎」です。腱鞘炎の中の一つの疾患で、「弾発指」とも呼ばれます。主に、手の親指に発症する事が多いですが、他の指にも起こります。痛みは、指の付け根と手の平側に生じます。

手の平にある腱鞘は、握るという力強い動きをする為に、靱帯により補強されていて、普通の腱鞘炎のように、炎症を起こしているだけでは、気が付きません。

炎症が進行すると、滑膜が腫れ、小結節を作ります。腫れ上がった腱は腱鞘を通りにくくなり、伸ばした時に引っ掛かり痛みます。

無理に指を伸ばして通そうとした時、指が弾かれた様に「パチン」と音がする様になります。これが「弾発指」で、しっかりと握る動作が出来なくなります。

また、指が一度曲がってしまうと、伸ばすのに強い力が要ります。重症の場合は手指を動かしただけで痛み、指が伸びたまま、または曲がったまま戻らなくなるなど、日常生活に支障をきたします。

出産後や更年期の女性に多い疾患ですが、単に指の酷使だけではなく、疲労、ストレス、ホルモンの異常、糖尿病、体質などが絡んでいると思われます。

「弾発指」も過労による腱鞘炎の場合と同様に、肩甲間部の治療をしますが、より深い部分の治療が必要です。

指の曲げ伸ばし運動やマッサージは、時期によっては、より悪化させます。背中の温湿布が安全です。

手指を使う時には、軽くテーピングをすると負担が軽くなり悪化を防ぎます。 特に、朝起きた時に指が曲がったままになっていると、伸ばすのに強い痛みが出るだけでなく、悪化します。

夜間は、添え木などを上手に利用して、伸ばした状態で休む様にすると良いです。昼間は、強く固定しないで、動きを軽く抑制する程度にテーピングします。まるっきり動かさないのもリスクがあります。

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