顎関節症

最近増えている疾患に顎関節症があります。食事の度に痛いのでかなり辛い疾患です。

顎関節は、身体の関節の中で最も複雑で精巧な関節のひとつです。蝶番のように開閉できるだけでなく、引き戸のように左右に移動することも出来ます。

食べ物を噛んでいる時には顎関節には大きな圧力がかかりますが、関節円板と呼ばれる特殊な軟骨によって、通常、頭蓋骨と下顎骨は互いにこすれ合うことがありません。

顎関節の障害は関節に起こる場合、関節を取り囲んでいる筋肉に起こる場合、あるいはその両方に起こる場合があります。様々な病態があり、顎関節リウマチ、関節が石灰化する強直症、感染性顎関節炎などは、西洋医学的な治療が適応します。

「鍼灸」適応の顎関節症は、筋肉の酷使による筋膜痛症候群や、関節内にある円板が正常位置よりも前にずれている関節内障害です。

筋膜痛症候群の主症状は咀嚼時の痛みです。原因は歯のかみ合わせが悪いとか、あごが弱い為とか言われていますが、ストレスによるという説が有力です。

ほとんどの症例で首、肩、肩甲間部に強い凝りがあります。

ストレスが溜まると、寝ている間に歯軋りをしたり、奥歯を強く噛み締めたりするので、それが一因となると言われています。しかし、昔はあまり無かった疾患です。やはり、柔らかい、口当たりの良い食物が多くなって、あごがひ弱になってしまったこともあるでしょう。

関節内障害では、関節内にある円板が前にずれて、正常位置には戻らないため、口が開く角度が限定されます。痛みと口が大きく開かない顎関節症特有の症状が現れます。痛みは、6~12カ月で減少しますが、口が十分に開かない症状は続きます。

普通、口腔外科・歯科矯正で固定用副子(スプリント)や、鎮痛薬、その他理学療法や手術で治療しますが、改善しないことも多い様です。また、その治療によって、口を大きく開けたり噛む時の痛みは取れても、新たに顎の重だるい症状が出て、一日中気になるという事もあります。

「鍼灸」では、初期の顎関節症であれば、小さな「置き鍼」を入れておくだけの簡単な治療で治ってしまう場合が多いですが、頸椎の凝りが強い場合、突発性難聴との合併があると時間がかかります。

また、比較的簡単に治っても何度も繰り返す場合があります。これはストレスを感じた時、知らず知らずの内に奥歯を強く噛み締めているのではないかと思います。折に触れ、首肩を緩め、上下の奥歯を離す様に心掛けて下さい。

ある日、顎関節がだるくなったり、ガクガク音がしたり、痛くなったりしても、あれこれいじくり回さないで先ず患部と首を温めてみて下さい。それだけで治ってしまう事が結構あります。2~3日様子を見て、痛みが変わらなければ早めに「鍼灸」です。

顎関節症は、噛む時や口を大きく開けると痛いのが普通ですが、痛みはないのに口が開かないタイプもあります。痛くないので気にしなければ、それはそれで良いのですが、何かの拍子に大きく口を開けてしまうと、強い痛みが出てくる場合があります。

出来れば治しておいた方が良いとは思いますが、痛みがある場合よりも治るのに時間がかかる傾向があります。

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