顔面神経麻痺

顔面神経麻痺には中枢性のものと末梢性のものがあり、鍼灸の適応は末梢性のものです。

中枢性のものは、目より上部の麻痺は無く額にしわが寄せられます。脳腫瘍、脳出血など、脳の中枢の病気ですからすぐに専門医に行って下さい。

末梢顔面神経麻痺の多くはベル麻痺と呼ばれるものです。ベル麻痺は「特発性片側性末梢性顔面神経麻痺」と定義され、通常人への感染はありません。

顔面神経は、頭の側頭骨にある顔面神経管という細い管の中を走行していて、ベル麻痺はこの管の中で神経線維が炎症を起こして、腫れている状態と考えられています。その為に神経が圧迫され、神経の信号伝達がブロックされたり、神経傷害が起こったりするとされています。

ベル麻痺の原因は不明ですが、顔面神経の腫れには免疫疾患やウィルス感染がかかわっていると考えられています。誘因は、ストレス、過労、顔の片側だけが冷えたことなどが挙げられます。

顔の片側の筋肉に、突然の脱力と麻痺が起こり、48時間以内に急速に定着します。

顔面の片側だけの表情筋が弛緩し、麻痺した側の目が閉じない、口元が緩むため飲食物や涎がこぼれる、健全な方にひきずられ顔全体がゆがむ等の症状が出ます。

応急処置として、まずマフラーなどを使って冷やさない様にします。目は閉じないため、乾燥して角膜を傷つけるので眼帯をします。

もし、麻痺が軽いものであれば、何もしなくても3日くらいで改善の徴候が現れ、3週間もすれば完治します。

目が閉じないなど、完全麻痺がある場合には早期治療(3日以内)が必要です。現代医学では、ステロイド系坑炎症薬と坑ウィルス薬であるアシクロビルの投与が一般的です。

2週間以内に改善が見られれば、ほぼ完治しますが、3週間経っても改善しないものは後遺症が残ると報告されています。

また、2週間で改善が見られるようであれば、何もしなくても治るという説もあります。しかし、それは結果論ですから早期の治療をするべきと思います。

この疾患で「鍼灸」にかかる患者さんは、すでに現代医学の治療を受けて改善が見られない、あるいは後遺症が残ったという場合がほとんどですが、やはり発症から早いものほど良く治ります。

50歳以上でヘルペスがある場合は、治りにくい傾向があります。特に疱疹とともに耳鳴り、めまい、難聴など、耳の症状が合併しているもの(ラムゼイ・ハント症候群)は、非常に治りにくいです。

顔の片側に違和感があったら、患部を触らずに首すじを温めてみて下さい。多くの場合これで収まると思います。もし、麻痺が継続する場合には、48時間以内でピークになります。

この時はすぐに専門病院に行って下さい。早めに、「鍼灸」を併用する事を勧めます。

顔面神経麻痺の後遺症

一年経っても麻痺が残っている場合には、完全な回復は難しいと思います。

顔面神経は麻痺の治癒に伴って、異常な接続を形成する場合があり、唾液の産生や舌の前部にある味覚、または涙の産生を阻害することがあります。

その結果、慢性の味覚消失(無味覚症)や、唾液の分泌中に眼に涙がたまる「クロコダイルの涙」と呼ばれる現象が現れたりします。

また、眼の周囲にある筋を支配している神経が再生する時に、わき道にそれて口の周りの筋に行き着いてしまうと、眼を閉じると口角が不随意的に上がってしまう状態が起こります。

侵された側の耳では、鼓膜を伸展させる筋肉が麻痺するために音が異常に大きく聞こえる聴覚過敏と呼ばれる状態になります。

慢性顔面痙攣 を引き起こす事もあります。これらの症状は、後々まで患者さんを苦しめます。

この時点では外見を含めて、鍼灸で完治を期待する事は残念ながら無理です。しかし、患者さん自身が感じている嫌な引き攣れ感や強張りは、かなり軽減されます。

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